短歌 2024.07

ふたりには不慣れで二人濡れてゆく「相合傘って歩きにくいね」

破られた約束ばかり覚えてる 守られたものもあるはずなのに

点描の始まってゆく世界には僕の形が見当たらず、雨。

全身で泣いたみたいに汗だくのわたしをなんで抱きしめちゃうの

まだ君が好きなんですがまだ君はわたしを好きにならないですか?

不特定多数も特定少数のひとりひとりでつくられている

傷つけるならしっかりと傷つけて 死んだ後でも痛むくらいに

ひとりでは生きてゆけない ふたりでも生きてゆけない 生きてゆけない

幸せになれないままの脇役よエンドロールを切り刻み ゆけ

俗説で構わないから教えてよ きみがわたしを愛する理由

呼吸して子ども作って寝て起きてまるでどこかの生きものごっこ

死にたいと言葉にすれば容易くてどうして空は遠いのですか

壊してよ あなた以外は誰ひとり僕が僕だと分からぬように

しあわせの形が違いすぎたからふたりでふたつでしかなかった

嘘つきは君のはじまり 騙されたフリをしている僕のはじまり

くだらない劣等感に引きずられどこか遠くに落ちてゆく。夜。

さよならをするためだけに僕たちは出逢ったのかもしれない 四月

あなたへの愛を今から歌います 耳をふさいで聴いてください

口付けで喉の渇きは癒えなくて抱きしめられていても寂しい

寂しいと言ってください どの花を贈るかはもう決めているから

さよならの発音なんて知らなくて構わないほど幸せでした

六時間経ってないのに痛み止め飲むようにもう既に会いたい

もう知ってしまった君の優しさを手放すなんて嫌でキスした

花びらに火を近づける 枯れるより綺麗な死などあるのだろうか

雑踏の中にあなたを探すとき後ろ姿も分かりやすくて