墓穴
地面には穴を
誰のためなのか
何のためなのか
そんなことはどうでも良かった
ただ一心に掘るだけだった
汗が頬を流れていく
こんなに頑張っているのに
誰も褒めてはくれない
地面には穴を
喜ぶ人はいるのか
悲しむ人もいるのか
そんなことは知らなかった
ただ一心に掘るだけだった
手に血が滲んでいる
道行く人は誰も
気にも留めずに歩き去ってゆく
地面には穴を
どこまでもまっすぐに
いくら掘ったって
大した深さでもない
裏側へ通じる筈もない
それなのに
上には行けなくなっていた
ただ一心に掘るだけだった
外からは全く見えない
一人として気付く人はいなかった
地面には穴を
誰のためでもなく
何のためでもなく
頬を流れていたのは
涙だったのかもしれない
やがて土が落ちてくる
助けを呼ぼうかと思った
けれどやめた
どうにもならなかった
どうにかしようとも思わなかった
ただ一心に掘るだけだった
いつか綺麗に埋まって
見えなくなってしまう
それは自分の墓穴だった