わたしに彼女の痛みは
わかりません
わたしに彼女の苦しみは
わかりません
いつもへらへら笑いながら
狭い部屋にうずくまって
左手に持った
カッターナイフの向こうを
ぼんやりと見透かす
そこに何の世界もないことに
少しだけ
安堵する
わたしに彼女の痛みは
わかりません
わたしに彼女の苦しみは
わかりません
この手に握った
カッターナイフが
誰も傷付けることがないと
言い切ることの
できない歯がゆさに
少しだけ
絶望する
わたしはへらへら笑いながら
カーテンを閉め切った部屋の中
両手に持った
カッターナイフで
空気を切り裂く
酸素さえ
この部屋の出入りを
やめてしまえば
そこに何の世界もないことに
少しだけ
安堵する