マニキュアの呼吸

時計の針で
呼吸をみじん切りにされながら
日付が変わるのを
じっと眺めていただけ

ゆったりと息絶えるように
ぬるくなった除光液を飲み干して
日付が変わったのを
じっと眺めているだけ

 またいつか
   いつか会えたら
      会えたらいいね

 

くだらないあの子の声色に
二度と会うことのないあの子の声色に
鼓膜を殴られながら
美化されたあの子の思い出に
もうどこにもいないあの子の思い出に
脳裏を焼かれながら

空っぽな部屋でおやすみを呟いて
寝付けないまま朝になるまで
適当に呼吸すればいい

あの子が好きだった
ラメ入りの薄い水色
瞼に垂らした

 

時計の針で
呼吸をみじん切りにされながら
日付が変わったのを
見逃しているだけ

ゆったりと息絶えるように
固まってゆく
マニキュアを噛み砕いて
日付が変わるのを
見逃していただけ

人間なんて使い捨て

だから
適当に呼吸すればいい

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