誰かは泣きそうなあの子を
笑わせようとおどけてみせて
誰かは泣きそうなあの子を
つたない言葉で慰めて
誰かは泣きそうなあの子に
寄り添って一緒に泣いて
あなたは何の興味もなさそうに
背を向けて歩き出す
誰かは輝く星を
捕まえようと腕を伸ばし
誰かは朧気な月を
カメラのフィルムに収めて
誰かはただ暗い空を
キャンバスに大きく描き
あなたは諦めたように
肩を落として歩き出す
明るい太陽の下で
誰かが誰かを傷付けている
そんな事実に震えながら
唇は笑っている
なにもかもがいつも通り
誰かは寂しいときに
受話器を手に取り
誰かは寂しいときに
散歩に出掛けて
誰かは寂しいときに
布団に潜って
あなたは泣き方も知らず
ただ真っ直ぐに歩き出す
誰かは笑いながら
今が楽しいからと言い
誰かは俯いて
いつか死んでしまうと言い
誰かは力強く
夢に向かっていると言い
あなたは言葉ひとつなく
どこへともなく歩き出す