ヒトゴトヒトリゴト

灰皿に積もった吸殻 ぼんやり見ていた
こんなに吸って何が楽しいんだか
なんて 自分のことさえ他人事で
窓の外を走って行く救急車のサイレンも
意味もなく吐いた自分の溜息も
同じくらい遠くから聞こえてきたんだ

ベッドに寝転がって瞼をこするあなたに
好きだよって呟いても 相槌すら打たれない
なんて あなたへの言葉さえ独り言で
早く会いたいなって言ったときも
会えて嬉しいよって声を弾ませたときも
あなたに届くわけないって知ってたんだ

新しい煙草に火を点けようとして
ライターを取り落とす
そんな僕にあなたが優しく微笑んだ気がした
けれど

 

僕の中の僕はとっくの昔に
誰かに奪われていなくなっちゃったんだ
なんて 他人事だね

僕の中の僕を奪ってくれるのが
あなただったらよかったのになあ
なんて 独り言だよ

 

ライターを拾うフリをして立ち上がって
濁った目眩に包まれながら
体温しかない口付けを落としてみようかな

あなたじゃない
どこか
どこか遠くへと落としてみようかな

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