短歌 2023.04 – 05

神なんてとっとと捨ててしまいなよ僕に祈って絶望しなよ

幸せになりたいなんて思わないことがそもそも幸せらしい

僕だって僕と別れてしまいたいあなたが僕をフッたみたいに

届かない名前を呼んでワンルームが広がってゆく広がってゆく

将来の夢から覚めてノートには加法定理の証明終わり

君がフリーハンドで描いたまっすぐな線の歪みに見惚れています

優しいと言われ慣れてもまだ君に優しくしたい僕でよかった

望まずに生まれてくれば祝われて望んで死んでいけば貶される

月の欠けてるところ埋められないけれど君の欠けてるところ埋めたい

どうあったって行方不明になれなくて宛もないのに「ゆくえ」を名乗る

いつの日か自殺未遂もしたけれど今は短歌を詠んでいたいの

僕だって許せないことぐらいある。たとえば……、僕が生きていること。

赦したくないし赦されたくもないけれどいつかは忘れるのでしょう

もしフラれてもそんなことあったねと笑える時がきっとくるから

選択を間違えた、って言うけれど君はなんにもえらばなかった。

いつの日か「愛してる」って言っていたアレ疑問系だったんですか

望まれてうまれてきたと言いますが望まれていない今のわたくし

「これからも一緒にいよう、死ぬまで」とその無邪気さが少し怖くて

糖衣錠みたいに君を騙したいけれど触れてもくれないんだね

元カレのゾロ目の誕生日を今も忘れられない大っ嫌いなのに

吸う場所がないのに煙草を買うように今日もあなたに会いたいと思う

今度こそやめるってもう何度目の赦し与えてしまうのだろう