短歌 2023.07 – 2023.08

シロップは 16g セッターは 14mg をゼロのわたしへ

声色でわかってくれる君だからありのままの僕でいられる

もし空に鳴き声があるならそれはしかたないほど美しいだろう

綴じてきた思い出たちをさよならの一声だけで閉じてしまった

ダミ声のバレーコードを吐いたのは機嫌の悪いギターだからさ

君の泣く声なら聴いてみたいのに息を吐く音さえ静かだね

逝きたくもない生きたくもないどこにも行きたくもない息したくない

強くなるほどに誰かを傷つけてしまうのならばならなくていい

寝冷えした体に腕をまわすまだふたりごっこが上手くできない

遺されたあなたの身にもなってみるだから僕よりお先にどうぞ

なぜ空は青いのでしょう僕たちが空は青いと知っているから

泣きなさいわたしの街が沈むほど魚以外が溺れるほどに

幸せの定義を述べよさもなくば僕があなたを幸せにする

なぜ君が苦しまなくちゃいけないのこんな世界は要らない 壊す

唇を重ね体を重ねても心の重ね方を知らない

花はまだ形を保ち僕はもう君の名前を思いだせない

泣き果てたふたりのためにさよならとドライフラワーひとつ残して

宇宙さえいつか消えると言うのならそれでも僕はいま生きている

嗚呼なんだただ我慢すら効かないで堕ちてゆくのが好きなだけです

生きていたものの命を味わって生きる資格が僕にあるのか