短歌 2024.08

君が好き 今更どんな醜態を見ても嫌いになれないぐらい

やり過ごす日々にときどき差し色のピンクみたいにあなたが笑う

のど飴をいくら舐めても痛いからあなたを呼んでしまわずにすむ

調律を怠ったまま弾くピアノ あした世界は終わるんだって

もうきっと恋はできない 君のこと死ぬまで好きだ 死んでも好きだ

この曲が終わる頃には着くだろう 別れ話をするファミレスに

さようならぐらい言わせてほしかった これで最後と決めていたなら

君だけに伝えたいのに君じゃない人しかいない場所で呟く

もう他の花と一緒に枯れてゆくことはできないドライフラワー

忘れたい人だったのに忘れなきゃいけない人になってしまった

約束をしたのに切り取らないままで残した指がときどき痛い

二本目の煙草にわざとゆっくりと火を点ける まだ話し足りない

さよならを言う資格さえないような気がするけれどやっぱり言うね

憶測の域から出して曖昧な態度の裏を明け渡してよ

忘れてはいないけれども思いだすこともない人にはしないでよ

付き合っていつか別れるぐらいならよくわからないふたりでいたい

星でさえ群れて死ぬのになぜ君はひとりぼっちが好きとか言うの

ゆっくりと煙草の煙 今きみが誰を見てるか分かってしまう

抱きあうとしっくりこない 僕たちは生まれたときの形が違う

さようなら、いとしい人よ。さようなら、いつかいとしくなくなる人よ。