短歌 2024.09 – 2024.11

大袈裟に呼吸してみる 生きていることを自分に知らしめるため

きっと非の打ちどころある心でしょう わけもないのに悲しいなんて

受け取ってくれない花は枯れたのに急に優しい顔をしないで

好きでいることをやめたくない 星のひかりは届かなくてもひかり

僕じゃない誰かのための朝が来る 僕の薬がやっと効きだす

さよならが変に優しい君はまだ剥がれかけてる瘡蓋みたい

AIが僕の代わりに幸せになってくれるしもう死のうかな

寂しさは似たり寄ったり 好きじゃない人とうっかり死にそうになる

好きになることは寂しいこと 花は誰かのために咲くわけじゃない

好きなのはこんなわたしを絶対に好きにならないあの人でした

「いてくれてありがとう」って言っていたあなたがいなくなってしまった

くだらない話で君を引き留めて言いたいことは言えないままで

幸せになるためだけにつくられた主人公とかつまらないじゃん

もう二度と会えないことは変わらない 星の名前をいくつ知っても

無自覚に優しい人の言い訳を味がなくなるまで噛み締める

昨日より分厚い夜にくるまって昨日より濃い涙を流す

寂しさを剥きだしにして食い物にしてくれるのを待っていたのに

跡がつくまで抱いたって僕たちはふたり 一緒に寂しがろうよ

傷つけることが怖いと言いながら傷つくことが怖かっただけ

誰からも傷つけられていないのに傷ついている自分がキライ

日を跨ぐ生き物たちが仲間入りするのをそっと待っている星

生きるためだけに生きてもいいですか “あなたのため”を諦めるなら

なにひとつ上手くいかない夜があり地球の裏は明るいだろう

嫌うならちゃんと嫌えよ さよならが社交辞令のように響いた

忘れたい 隣にいない寂しさも隣にいても寂しいことも

人生にハマらないよう少し目を逸らして今日をすり抜けていく